タイと日本は共に高齢化社会に突入していますが、注目すべきは「タイの高齢者が元気で活動的に見える」という点です。これは、日本の高齢者が慎重で落ち着いていて、整備されたケアシステムの中で生活しているという印象とは対照的です。本記事では、タイの高齢者がなぜ元気に見えるのかを探りつつ、日本の高齢者のライフスタイルと比較し、文化、環境、生活習慣の観点からその理由を考察していきます。
動き続けるタイの高齢者の日常
タイの農村部では、多くの高齢者が日常的に畑仕事、野菜の栽培、家畜の世話、孫の世話などを続けています。これらの活動は直接的な運動ではありませんが、筋肉や血流の働きを促進し、長期的に健康によい影響を与えています。
一方、日本では健康な高齢者であっても、静かで規則正しい生活を送る傾向があります。夫婦二人や一人暮らしで、散歩、家庭菜園、健康クラブへの参加などが一般的です。これらは安全で管理しやすいものの、タイの高齢者のような柔軟性に欠けることがあります。
タイの密接な家族構造
タイの高齢者の多くは、子供や孫と同居しており、教育、家事、育児といった役割を担い続けています。「自分がまだ役に立つ存在だ」という感覚が、身体的にも精神的にも活動的にさせ、愛する家族と過ごすことでストレスも軽減されます。
一方、日本では核家族化が進み、高齢者が一人暮らしや高齢者施設で過ごすことが一般的です。そのため孤独感やうつ病が社会問題となっています。
伝統食と健康の関係
タイの伝統的な料理には、ショウガ、レモングラス、ニンニク、唐辛子などのハーブが使われ、これらは炎症を抑え、血流を促進し、血糖値をコントロールする効果があります。また、多くの家庭では自家栽培の新鮮な食材を使うため、加工食品の摂取が少なくなります。
日本の伝統食も魚、漬物、豆腐、日本茶など健康的なものが多いですが、近年では高齢者の間でもラーメンや弁当など塩分の高い加工食品の摂取が増えており、長期的な健康への懸念が出ています。
信仰と心の健康
タイ文化では、宗教や徳を積む行為が高く評価されており、高齢者も早朝に寺に行ったり、ボランティア活動をしたりと精神的に充実した生活を送っています。「まだ誰かの役に立てている」という実感が、地域とのつながりを保ち、心の安定に繋がります。
日本でも禅や高齢者クラブなど精神的な健康を促進する取り組みはありますが、社会的な孤独や競争意識は、依然として高齢者の心の健康に影響を及ぼしています。
政府と地域の支援体制
日本は整備された医療・介護制度を持ち、老人ホーム、訪問介護、高齢者手当などのサポートが充実しています。ただし、その結果として高齢者の自立性が損なわれることもあり、受け身になりがちです。
タイでは、制度面での支援は限られていますが、多くの高齢者が家庭や地域社会で役割を持ち続けているため、「助けられるだけの存在ではない」という自覚が生まれています。
日常生活に組み込まれた運動
タイの高齢者は、朝市へ歩いて行く、裏庭で野菜を摘む、家事をしながら体を動かすなど、無意識のうちに身体を動かしています。
日本の高齢者は、ヨガ、太極拳、公園での散歩など、計画的な運動を行うことが一般的です。これも健康には良いものの、モチベーションや体力の有無によって継続が難しい場合もあります。
まとめ:動き続け、社会の一員であり続けることが鍵
比較から分かるように、タイの高齢者が元気で活動的に見えるのは、最良の福祉制度があるからではなく、「日常生活の中で役割を持ち続けていること」と「自分はまだ大切な存在だと感じられること」が理由です。これが身体と心の健康を支えています。
日本の高齢者は、計画的な健康管理や強力な医療制度という強みを持っていますが、社会的・感情的な活力を保つ点では、タイから学ぶべき部分もあるでしょう。
両国ともに異なる強みを持っており、お互いの良さを取り入れることで、東南アジアにおける高齢化社会の未来はさらに明るいものになるはずです。

